10月16日(金)、第35回となる経営者朝会を開催させていただきました。
今回は「Post-COVID 2020 and beyond: 社会課題を捉え、伝え、変える」をテーマに開催させていただきました。
COVID環境下、社会格差が可視化されその多くが悪化すると同時に、virtual世界を中心により多くの人が垣根なく共感でつながり、Black Lives Matter等のうねりを興してきました。時代の変化を捉え、共感のストーリーとテクノロジーで社会課題に向き合うお二人にご登壇いただきました。
二度目のオンライン開催となった今回の朝会もたくさんの方々にお集まりいただき、盛況のうちに終了いたしました。誠にありがとうございました。
パタゴニアの環境保護キャンペーン、つくば市総合運動公園基本計画の賛否運動(住民投票により305億円の計画は白紙撤回)等、企業、消費者、住民と共に変えるキャンペーンを牽引。「仕事」を「志事」と呼び、クリエイティブを「広告」にとどまらず、社会課題の解決やビジネスの成長に拡張する取り組みを推進。クリエイティブの力で社会をポジティブに変えていくことが信念。2014年Creator of the Year メダリスト、広告電通賞、Cannes Lions、PRアワードグランプリ等。https://goinc.co.jp
東日本震災時に情報ボランティア活動を機に、テクノロジーによる地域課題解決に可能性を感じ、2013年一般社団法人コード・フォー・ジャパンを設立。「テクノロジーで、地域をより住みやすく」をモットーに「シビックテック」推進、オープンソースGISを使ったシステム開発、企業のオープンイノベーションを支援。
また、自治体のスタートアップ支援政策やオープンデータ活用を推進。東京都コロナ対策サイト立上げに尽力した位置情報系シビックハッカー。神戸市Chief Innovation Officer、総務省地域情報化アドバイザー、東京都DXフェロー等。 https://www.code4japan.org
最初のプレゼンターは、The Breakthrough Company GO でクリエイティブディレクターをなさっている砥川直大さんでした。
東日本大震災が起きた頃からご自身のスキルをどう活かしていくかを考え始め、社会への問いかけとなるような広告を手がけられています。
砥川さんがクリエイティブの力を感じることになった一つは、つくば市総合運動公園基本計画の賛否運動でした。この問題を知りより多くの市民が関心を持つべきだと考えられた砥川さんが作られたのが「馬鹿でかショッピングカート」です。計画の過剰さを象徴する巨大なショッピングカートを街中に設置したメッセージ広告で、SNSを通し発信・拡散され、ニュース番組でも取り扱われました。結果反対側に圧倒的な票が集まり、砥川さんは新しい未来を描くことができるクリエイティブの力を感じたと振り返っていらっしゃいました。
砥川さんは、多くの企業がコモディティ化し人口減少が進む時代において企業が生き残っていくには、プラスアルファとしての社会に対する貢献や公益性の高さが必要であると主張されます。今まではステータスが注目されていましたが、自分たちがどういう想いを持ち行動するかというスタンスが現在問われているそうです。
現状と本来こうあってほしいという理想を設定し、その理想の実現に向かっていくことが企業の貢献であり、潜在的に持っている「なんで〇〇しないといけないのか」を呼び起こすような問いが重要だとご指摘。また、問題意識を示すことでブランドに対する好感度が上がり、実際に消費者に選ばれることにも繋がるそうです。
複数の実例と共に、企業が自分たちの持っている商品を体の不自由な方など違う人の視点から考え、より多くの人に使いやすいものにしたという取り組みを紹介してくださいました。
ドイツの生理用品会社では、女性にとって生活必需品であるはずの生理用品が贅沢税の対象となっていることに問いを投げかける商品を販売し、それをきっかけに国会でも議論が進んだそうです。広告や商品を通じてメッセージを発し、現状に対する問題提起をすることで、ルールを変える動きに発展させることができます。
企業には、世の中にある課題の存在に向き合い、解決に仕向けていく役割を果たすことができると砥川さんはおっしゃいます。
難しい問題になることが多いからと二の足を踏んでしまうかもしれませんが、スーパーの食品廃棄問題のように、日常生活の中で「なんで〇〇なんだろう」と違和感を感じるものからアプローチするというやり方もできます。通常の事業内容について、企業としてどのような意思を持って取り組んでいるかを社会に伝えるというやり方もあります。
砥川さんは、スペインのサステナブルファッションブランドECOALFが日本上陸する際、ブランディングに携わられました。そこで作られた広告は、廃材をリサイクルしたものです。ECOALFの商品が廃材からつくられていることから、広告も複数の企業の使わなくなった広告を塗りつぶし再利用したものにしたそうです。
資源を無駄にしないという意義に複数の企業が共感し、そのためには自社の広告を塗りつぶす形でも協力するという時代を象徴するアクションだったと砥川さんはおっしゃいました。
最後に、世の中に良い問いを示した企業がブランドをつくっている時代であることを改めて強調されました。
今後も「企業と一緒になって事業成長やブランド好意に繋がる、社会への問いを一緒に考え、作り出し、変えていく」そうです。
お二人目のプレゼンターはコード・フォー・ジャパンの代表理事等をされている関治之さんです。エンジニアのご経験をお持ちで、シビックテックやオープンイノベーションに関する取り組みをされています。
関さんは従来の市民と行政の関係に疑問を持ち、より行政と一緒に考え行動したいと思ったそうです。コロナ禍で主眼になった行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、問題状況は20年前から変わっておらず、背後には専門家不足などの構造的な課題があるそうです。そこで、市民の考えを自治体が拾い上げ、自治体間で共有する形での解決に向けた活動が行われるようになりました。シビックテックとは市民がテクノロジーを使い行政サービスの問題や社会課題を解決していく取り組みのことです。台湾など世界中で取り組まれ、日本の中でも約80地域でコード・フォーを冠した団体が活動しています。日本の団体のハブとなっているのがコード・フォー・ジャパンだそうです。
コロナ禍ではコード・フォー・ジャパンから支援情報に関する検索サイトやCOCOAアプリの参考になるようなまもりあいJAPANというアプリなどが生まれました。中でも話題になったのが、東京都の委託を受けて開発した東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトです。グラフがメインで具体的な数字の表示や多言語対応もしているデザインが評価されました。また、GitHUBという技術者向けのオープンソースサイトでソースコードを公開したことも、自治体での前例がほとんどなく話題になりました。オープンソース化することで世界中から情報を受け付けながら進化していくウェブサイトになり、かつ誰でもコピーできるため複数の自治体でも活用されました。
コロナ禍で海外でも多くの民間アプリが生まれ、シビックテックも新たなステージにきているそうです。
オープンソースに投資することで社会的な知識資本が蓄積されていくと関さんは仰います。エンジニア同士がブログなどで情報を共有することで他の人が同じことで困らないようにするという形での貢献が進んでいるそうです。
シビックテックは次世代を育てるための場所にもなってきたそうで、インターンにも学校にも行けない中せめて活躍の場を作りたいと学生自身が立ち上げたシビックテックチャレンジカップというプログラミングコンテストも行われています。関さんは問題に直面したときに課題に解決する側に回るという視点を持てるのがシビックテックの良いところだとおっしゃいました。
関さんは、社会課題の解決において当事者や課題に向き合っているNPOの存在を重視されています。技術を使えば様々なことができるもののそれについての知識も時間も人材も足りていないNPOがほとんどだそうです。そこで、関さんは技術者とNPOをマッチングする活動を始められました。NGOをサポートするSTO(ソーシャルテクノロジーオフィサー)という職業やSTOスクールを作ったそうです。
実際に、コロナ禍で問い合わせの増えた生活困窮者支援団体に技術者が入りチャットボットを作りました。これにより問い合わせに手を取られすぎず、アウトリーチもできるようになったそうです。
Society5.0という言葉が掲げられ、国でもスーパーシティやスマートシティの取り組みが進んでいます。未来的な社会で便利なサービスが提供されるだろうというイメージで進められていますが、関さんはその先に幸福はあるのかを考えていらっしゃるそうです。まちづくりは従来地域住民が行ってきたもので、便利になるか以上に地域住民が関わっていいけるかが重要であると関さんは主張されます。
そこでDIY(Do it Yourself)都市を作る取り組みを始められました。DIY都市の要件は「幸せな街をつくる」「みんなが意思決定に参加できる」「オープンにつくる」「皆でつくる」ことだと説明してくださいました。まず地域の垣根を超えて皆が合意できるような幸せの指標を作ったそうです。次に必要となるのは透明性のある議論ができるプラットフォームです。議論の場としてDecidimというツールが各地で使われており、バルセロナではその双方向性を生かし市民参加型予算編成などが行われているそうです。コード・フォー・ジャパンではDecidimの日本語化を行い加古川市から展開しているそうです。
関さんは、これからの企業は「利益追求」から「共通善の追求」へ、「囲い込み」から「オープンイノベーション」へ、「中央集権」から「自立分散」へ、「組織の成長」から「個人と組織の成長」へ、「急成長」から「持続可能性の追求」へとあり方が変化していくことになると仰います。いち早く変化し世界のデファクトスタンダードを作っていくような企業が現れることに期待をかけられ、お話をまとめられました。
本年最後の開催であった経営者朝会では、共感のストーリーとテクノロジーで社会課題に向き合うお二人のお話を伺い、これからの時代の社会課題へのアプローチを学ぶことができました。