10月19日(金)、第29回となる経営者朝会を開催させていただきました。連日曇りや雨が続いていた東京ですが、朝会会場ではこれまでにない華やいだ、フレッシュな雰囲気であふれていました。
それもそのはず、第29回経営者朝会は、「ミレニアル世代の社会変革」をテーマに開催させていただきました。あと2年で労働人口の50%がミレニアル世代に。ミレニアル世代が経済市場の中心となる時代で、彼らは今何を課題とし、どのような社会をめざして、イノベーションを起そうとしているのか。
今回は、若き次世代リーダー達4人をお招きし、パネルディスカッション形式で「ビジネス×ソーシャル×パブリック」の文脈での彼らの取り組みや思いを語っていただきました。今回もたくさんの方々にお集まりいただき、おかげさまで盛会のうちに終了いたしました。誠にありがとうございました。
2007年慶応義塾大学院理工学研究科卒業後、投資会社にて日米東南アジアのVC投資に従事。その後、製薬会社へ転職し上海駐在を経て、2014年に小泉グループ株式会社へ入社。グループ各社の事業を現場に出て学んでいる。また、2009年より社会起業家を支援するソーシャルベンチャーパートナーズ東京(SVP Tokyo)にパートナーとして参加、2011-2013年はボードメンバーを務める。2017-2018年、NEXUS Global Youth Summitに出席、2018年よりNEXUS Japan Country Leaderとして、日本の社会起業家と次世代リーダーを繋ぐ場づくりを行っている。
https://nexusglobal.org/
2012年学習院大学卒業後、セブン-イレブン・ジャパン株式会社に入社。2015年まで3年間、同社で勤務後、西濃運輸 株式会社に入社。2016年〜2017年まで同社オープンイノベーション推進室にて新規事業の企画立案やM&Aを担当。
現在は株式会社セブン-イレブン・ジャパン専用の買い物代行会社としてセイノーホールディングスの100%出資で設立されたGENie株式会社にて買い物弱者解消のためにラストワンマイルの配送事業を行なっている。
https://genie.jp.net/
1981年東京都新宿区生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院にてセクシュアリティを中心に研究した後、その研究内容と性同一性障害である自身の体験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』を講談社より出版。大学院卒業後、2年間のバックパッカー生活で世界約50カ国+南極を巡り、現地で様々な社会問題と向き合う。帰国後は日本企業に3年勤務、現在は「誰もが輝ける新しい場所づくり」を目標に掲げ、飲食店の経営や日本最大のLGBTプライドパレードの運営を行う特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事を務める。全国各地で講演会やメディア出演も行い、日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に貢献。渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員。
http://fuminos.com/
家業であるチェリオでは、事業群の再建及び事業OSアップデートに従事。労働集約型ローカル産業の生産性向上、サプライチェーンの最適化、人材育成モデル構築、ダイバーシティ&インクルージョン推進に取り組む。チェリオは東京レインボープライド(日本最大のLGBTQプライドパレード)において、2013年唯一の日本企業スポンサーになり、翌2014年以降はトップスポンサーを4年間継続中。その他、米日財団US Japan Leadership Programフェロー、ASIA SOCIETYのヤングリーダシッププログラムASIA21フェロー。日米起業家交流プラットフォームThe Tofu Projectに設立から参画。アートを通じて子供の創造力活性化に取り組むNPO法人E-LAB理事、スタンフォード発女子学生向けSTEAM教育プログラムSKY LABOシニアアドバイザー。東京大学教養学部卒業(ハワイ先住民族研究)、スタンフォード大学経営大学院経営修士(MBA)、スタンフォード大学ビジネススクール日本同窓会会長。趣味はステーキとスニーカー(400足)。
https://www.cheerio.co.jp/
前半は、主に杉山文野さんと菅大介さんからLGBTQプライドパレードについてお話しいただきました。
LGBTQプライドパレードは年一回行われる日本最大のLGBTQパレードで、杉山文野さんが共同代表理事を務める特定非営利活動法人東京レインボープライドによって運営されています。
パレードは1994年から、「黙っていても何も改善されない。気づいてももらえない。そうであれば、LGBTQの存在を自ら発信していこう」と始められたものです。最初の数年は、パレードの参加者数がなかなか伸びず苦しんでいたそうです。地道な活動が続いていたなか、2013年に菅大介さんが専務取締役を務める株式会社チェリオコーポレーションが、東京レインボープライドの唯一の日本企業スポンサーとなりました。そして、2014年渋谷区の「パートナーシップ条例」制定を経て、パレードの参加者は急激に伸び、2012年にわずか4500人だったところから、2018年には15万人にまで増えました。
東京レインボープライドのスポンサーになった経緯について、菅大介さんが家業であるチェリオに戻った頃を振り返りながらお話しいただきました。チェリオに戻り、「みんなが暮らしやすい社会を一緒に作っていこう」と会社の重役に話した当初は、誰も興味を持ってくれず、無関心からのスタートでした。
そこで頼ることをやめ、「全部自分たちでやる、という意志を持って進めてきた」。とはいえ、LGBTQのスポンサーになることを説得する上では、自社市場シェアが0.6%であるなかで人口比率6%のLGBTQに自社製品を訴求できるという経済合理性を強調し説得したそうです。チェリオのDiversityに向けたコミュニティづくりに関しては、7年前から携わる採用活動でカメルーン出身の女性を採用しました。当初は驚きを隠せなかった社員も、今ではどのような人材が入ってきても動じず、多様性を受容できるようになってきたそうです。また、カメルーン出身の女性も社内で大活躍しており、多様性を据えることによりビジネスで価値を出せる時代になったと仰っていました。
後半は主に、NEXUSについて小泉裕義さんから、GENie株式会社での取り組みから見えてきたビジネスの在り方について田口義展さんからお話いただきました。
NEXUSとは世界50カ国以上から4800人の富裕層とソーシャルイノベーターが集まる会議で、メンバーは全員35歳以下。今年はニューヨークで開かれました。そこではみんな、会社の肩書きを外し、名札には名前と国籍しか書かれていません。コミュニケーションの中心は、「あなたは社会にどんな影響を与えたいのですか?それを助けるために私に何ができますか?」という内容です。
社会起業家が自分の持っているアセットとノウハウを生かして、社会をどう良くしていくのかを、熱心に話し合うその会議に参加したことによって、資本主義のコスト・ベネフィット的な考え方から「共感を埋めるか、そこにミッションはあるか」という考え方になっていることに気づき、価値の基準が少しずつ変わってきていると感じたそうです。
田口義展さんは、現在携わる事業で「価値の変化」を感じていると仰います。田口さんはGENie株式会社で、買い物弱者解消のための「ラストワンマイル」の配送を手掛けています。サービスの利用者は高齢者であることが多く、一人暮らしの方も多いそうです。そんな彼らとの関わり合いの中で、物流においての従来の価値「早く、たくさん、確実に」から「コミュニケーションをする」という新しい価値に気づいたそうです。
社会が「数値より共感、想い、ミッション」を大事にするようになりつつあることに気づかされる内容でした。
最後に、本日登壇いただいた4人に「2040年に向けて」の想いを語っていただきました。
菅大介さんは「2040年はわからない」としながらも、Glass Ceiling (ガラスの天井)を突き破っていく世の中にしたいと仰っていました。持って生まれたものに自信を持って生きていける、そんな世の中を作るための「Change with チェリオ」という言葉が印象的でした。
杉山文野さんは、この先の社会は「希望」が大事だと仰います。そのためにはかっこいい大人が増えることが大事で、子どもたちの憧れる大人になりたい、「希望のない人生は生きるに値しない」。だからこそ、「その希望になりたい」、「キラキラの希望ではなく、あいつにできるのなら俺にもできると思ってほしい」と仰っていました。
田口義展さんは、人生のミッションは、27000人のセイノー社員の幸福だと語ります。社員が会社の将来性に誇りを持てるか。また、社会のインフラでもある物流でビジネスを行なっている以上、お金だけでなく、社会を良くしていると自信を持って言える会社を作っていきたいと決意を新たにしていました。
小泉裕義さんは、社員の幸福の追求と共感をコミュニケーションの基本としたコミュニティの創造をしていきたいと仰っていました。利益の追求のみならず、地域の方や社会に対してきちんと貢献していく、そして、より良い社会を創っていくという強いメッセージをいただきました。
第29回となる今回の経営者朝会では、Doing good by doing well (経済的に成功し、その余りでいいことをしよう) からDoing well by doing good(良いことをやっているとパフォーマンスが上がる)への時代の変化を感じることが出来た会となりました。