年が変わり最初のSBP経営者朝会(第26回)は、2月16日(金)に開催させていただきました。
今回は、「東日本大震災から7年 - Reborn再生するマチ・ヒト・コト」をテーマに、東北で価値とつながりを再生し、未来を創造したプロジェクトのプロデューサー小林武史さんをスピーカーとしてSkype中継でお繋ぎさせて頂きました。おかげさまで盛会のうちに終了いたしました。ありがとうございました。
山形県出身。Mr.Children、Salyu、back numberなど数多くのアーティストのプロデュースを手がける。岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」(1996年)や「リリイ・シュシュのすべて」(2001年)など手がけた映画音楽も多数。2003年に櫻井和寿、坂本龍一と、環境プロジェクトへ融資を行う「ap bank」を設立。音楽を聴きながら環境問題を考える野外イベント「ap bank fes」を、2005年より毎年夏に開催、2011年の東日本大震災以降は東北の復興支援活動を中心に活動している。2010年より千葉県木更津にて約30ヘクタールの農地を取得し、有機農業を開始。食やエネルギーなど、様々な循環を体感できる場づくりを行なっている。
http://www.apbank.jp
http://www.reborn-art-fes.jp/
2018年初のSBPプレゼンターの小林様は自身が実行委員長を務める「Reborn- Art Festival 2017」の事例を取り上げ、現代社会のライフスタイルついてご説明されました。当日はテレビ電話を使っての発表。オンラインでのSBPの開催は初でしたが、会場の参加者様と活発に議論を交わされました。
2003年に始動した「ap bank」でのご体験に始まり、2011年の東日本大震災をきっかけに立ち上げた「ap bank Fund for Japan」による石巻専修大学でのボランティアチームの活動、そして東日本大震災の復興支援の一環として始まった「Reborn-Art Festival」とつながります。
<以下、小林さまのコメント要旨>
「Reborn- Art Festival 2017」は石巻市、牡鹿半島を中心に行われました。公募によって集められたボランティアサポーター「こじか隊」や、地元の方々を巻き込んでの開催となりました。日本の復興システムを見ると、行政が主となって進めるというケースが多くみられます。しかし、地元の人たちが立ち上がり、自分たちの地域を復興させるという、内から復興していくシステムを作りたかったのです。「音楽フェス」と呼ばれるものは3日間程度しか開催しないのが通常です。しかし、「芸術祭(Art Festival)」はもう少し長く開催できる力を持っています。準備段階や開催後のフローも含めるとより長期的な効果があります。
「Reborn- Art Festival 2017」は「食」にも焦点を当てています。私たちが生きるために「食べる」ことが不可欠ですが、現代社会で「食」は蔑ろにされる場合も多々あります。「Reborn- Art Festival 2017」はイベントの主旨に共感してくださり全国から集まってくれたシェフや地元のシェフ、料理人によって考案されたメニューを食してもらうことにより、参加者に「食」の大切さを改めて感じてもらえるような場にもなりました。
当初2015年の開催も考えていたのですが、地元の方々との話し合いに時間をかけた結果、16年にプレイベント、17年に本祭という形で開催できることになりました。2017年の本祭では51日間にわたり「食」「アート」をテーマに行いました。
開催地である石巻の牡鹿半島は決して利便性のあるところではないですが、都市にはない魅力を持っています。瀬戸内国際芸術祭でもそうですが、幅広い層の方々に石巻まで来ていただいていることが大きいです。都市の人々は利便性や経済性を求めすぎるがあまり、時間を「圧縮」して生きている感覚が多くなっていると思います。対して地方にはその「圧縮」が少ないように思います。この「圧縮」されたものがほどけていく感覚こそが地方の魅力です。山登りやスポーツ、地域での遊びを通して心を旅させることができるのです。
現代アートの作家たちは地方にある手付かずの自然から、作品を生み出します。
なにかに囚われずに見る人ひとりひとりが自由に感じ、出会えるものが現代アートなのです。
地理的な話をすると、石巻の牡鹿半島と仙台の距離は、東京と鎌倉の距離感に似ていると思います。「Reborn- Art Festival 2017」はあくまで一つのきっかけですが、この石巻という土地に、仙台の人々、仙台に来る人々が誇りに思えるようなフェスティバルとなれば、と思います。
「Reborn- Art Festival 2017」のオープニングイベントでは、プロのシェフと来場者とのラビオリづくりや、巨大なパエリアを作りました。そのシェフの中にはカリフォルニアの有名オーガニックレストラン「シェ・パニーズ」で経験を積んだ方(ジェローム・ワーグ氏)もいました。彼のような、「食材」を大切にしたシェフは日本でも増えてきています。最近ではフラスコや窒素など、今まで料理に使われなかったアイテムを使って料理をする手法も流行っていますが、今後はより「食材」にフォーカスしたシェフや料理が注目を集めると思います。
「Reborn- Art Festival 2017」のクロージングイベントとして「盆踊り」を行いました。どうせやるならと思い、コンドルズというパフォーマンス集団と共に盆曲を一緒につくりました。地域の子供達も巻きこんでこの盆踊りのために「やぐら」をつくりました。東京メトロのCMの曲をここ2年ほど担当しているのですが、そのCMで表現されているのは、東京も「地域」からできているということ。世界は全て「地域」からできています。それぞれの地域に色々な営みがあり、それを生かした復興の在り方を考えていきたいと思っています。
質疑応答では、「アートという静的なもとと音楽という動的なもののミックスのゴールをどのようなものにしたのか」「震災というネガティブなものをポジティブに変える日本の取り組みは海外ではどのように評価されているのか」などといった質問がされました。