【開催報告】第23回SBP主催経営者朝会(2017/06/16)

6月16日(金)、第23回目となる経営者朝会を開催させていただきました。

今回の会場も、前回と同様にUBSグループ東京オフィスの会議室でした。大手町の会場の雰囲気に慣れたためか、今回のテーマの「マインドフルネス」のためか、終始和やかな雰囲気で、自分自身の状態、想いを素直に見つめ、向き合うことで新しい価値が発芽することを学ぶことができました。

また、質疑応答はいつものように活発。さらにはプレゼンターのお一方(特別講演)、塩沼亮潤大阿闍梨のご著書をいただける抽選会もあり、盛会のうちに終了いたしました。いつも多くの皆様にご参加いただき、心より御礼申し上げます。

プレゼンター

ImaginEx 代表 町田 来稀 (まちだ らいき) 様

米ブラウン大学生物学部人間生物学科卒。ボストンで生まれ、23年間アメリカとシンガポールで過ごす。卒業後はC型肝炎のワクチン開発の研究に取り組む。2013年からは軽井沢で日本初となる全寮制インターナショナルスクール(ISAK)の立ち上げメンバーとして活躍。ISAKのサマースクールのディレクターおよびリーダーシップ・カリキュラム構築のコンサルタントおよび講師として関わる。

米国のマインドフル・スクールのトレーニングも受け、今まで世界25都市、4500人以上にワークショップを行う経験を持つ。2015年よりImaginExの立ち上げのため独立。
https://imaginex.jp/about-us/

特別講演

福聚山慈眼寺 住職 塩沼 亮潤 大阿闍梨 (しおぬま りょうじゅん だいあじゃり) 様

1968年、仙台市に生まれる。1987年、吉野山金峯山寺で出家得度、修行と研鑽の生活に入る。
1991年、 大峯千日回峰行入行。1999年、大峯千日回峰行満行。2000年、四無行満行。2006年八千枚大護摩供満行。
現在、仙台市・秋保 慈眼寺 住職。大峯千日回峰行大行満大阿闍梨。
http://shionuma-ryojun.com/profile/index.html

内容

ImaginEx 代表 町田 来稀 (まちだ らいき) 様

町田来希さんは「海外で育った影響で日本語がそこまで得意ではないですので」とネイティブな日本語の前置きをし、参加者を軽くほぐしてプレゼンテーションをスタートされました。

まずは、マインドフルネスなどに対して理解してもらうため、脳の仕組みを理解する簡単な実験。これも参加のみなさんで非常に盛り上がりました。

それは、右手と左手をお祈りのように組み合わせ、どちらの親指が上に来ているか。確認したら、その手を組み替えるというもので、すると多くの人が違和感を覚えるという結果になりました。

町田さんはその理由として、「慣れ」だとおっしゃいます。
脳は行動を繰り返すにつけ、脳細胞の繋がりが増えていきます。つまり、この繋がりが多いほど、その行動は楽になり、逆に普段していないことは、脳の繋がりがないために違和感を覚え、その違和感は不安や、面倒くさい、逃げたいなどといった感情となって現れます。これは脳の偏桃体という機能のためであり、サバイバル脳と呼ばれています。従来と違ったやり方、視点に対して、反射的に逃げてしまうのです。

それに対し、前頭前野においては理性的、理論的な判断が下されます。やり方、視点を判断し、行動の選択を行うのです。これは成長脳と呼ばれています。

「しかし、私たちは意図的にサバイバル脳から成長脳に変えることができます。これは自分の呼吸を意識するだけで可能になるのです」と、驚くべきことを仰いました。

マインドフルネスとは、呼吸など一つのことに集中する事です。人間は誰しも何かの行動をしている最中に、他のことを考え始めたり、気を取られたりしてしまいます。これはサバイバル脳のおかげです。しかし、気を取られたことに気づき、意識を呼吸に戻すことができれば、サバイバル脳の機能を低下させ、前頭前野に意識を向かせることができます。

マインドフルネスとして呼吸に集中していけば、一つのことに集中することができるようになります。これを繰り返していくうちに、今起こっていることに注意を向け、そしてそれをあるがままに受け入れることができるようになります。

一つ注意しなければならないのは、その時に自分自身に解釈を加えないことです。自分はダメだなどといった判断を付け加える必要はありません。

いま、マインドフルネスの研究は進んできています。70年代には医療機関におけるマインドフルネスの研究がされ、入院患者のストレス解消、血圧の低下などの効果が発見されました。90年代では精神的な健康効果が発見され、うつ病の改善や睡眠障害の改善、不安障害の改善などの効果を得られることがわかりました。

2000年代になると、教育におけるマインドフルネスに関して研究が進められるようになりました。自己管理力の育成や集中力記憶力の向上、対人関係能力の育成などの効果があることがわかりました。

マインドフルネスはなぜこんなに効果があるのか、と疑問に思われる方もいるかもしれません。怪しいといわれることもあります。しかし、マインドフルネスは非常に簡単なことです。自分で自分の感情をコントロールする技術を身に付けることで、建設的な判断ができるようになるという事なのです。

わかりやすい例は、英語が苦手な人の場合、英語で話しかけられると緊張してしまうというものです。これは、サバイバル脳の影響です。そのままでは、ネガティブな感情を抱いてしまいます。しかし、普段からマインドフルネスをしていれば客観的に自分がマイナスになっていることに気づき、次にとる行動を改善することができるのです。

現代は急速に進化しています。その社会で活躍するために必要なスキルは三つあるといわれています。それは、

  • 不安な状態でも行動をとるスキル
  • 多様性を受け入れるスキル
  • 自分の強み弱みを把握するスキル
    です。

そのようなスキルを身に付けるためのワークショップを小学生から高校生までの年代に対し行っており、最近では社会人向けにも行っています。また、サマースクールも教育財団と組んで行っています。

質疑応答では、「左脳と右脳的な違いとはどのようなものなのか」といった質問が出ました。

福聚山慈眼寺 住職 塩沼 亮潤 大阿闍梨 (しおぬま りょうじゅん だいあじゃり) 様

塩沼大阿闍梨が一言口火を切ると、多少ざわついていた会場が一気に静まり、その静けさの中で大阿闍梨のご講話が始まりました。

「生家はお寺ではない、小学校の時にテレビで千日回峰行という行があることを知り、それ以来の夢は千日回峰行を行うこと。19歳で出家し、奈良の吉野山で修行生活を始めた」つまり、大阿闍梨も参加者も、そう変わらない人間ですよ、ということです。

「小僧生活は365日毎日同じ生活の繰り返しです」。物事を辛抱強く繰り返すこと。これは、お釈迦様や最澄が、同じことを同じように繰り返す中で、いつも初心を忘れずに行わないといけない、と説かれているそうです。

そして、ご本人の成し遂げた、千日回峰行も同じような単調な作業の繰り返しだと仰います。ただ、千日回峰行も同じようなルーティーンですが、「一日16時間も歩きっぱなしの、労働基準を優に超えるブラック修行だ」と、冗談をおっしゃい、会場を和ませ、続けてその中でもいろいろな気づきがあると。初心を忘れず、繰り返しの行動を行っていく中で気づきを得たのです。

「私は千日回峰行をやるという役割があって生まれてきた」。この行を社会に、みんなの生活に取り入れてもらうために生きていかないといけない、と考えていらっしゃいます。

塩沼さんが師匠から教わった4つのルールがあります。
「一に勤行、二に掃除、三に追従、四に阿呆」です。

一つ目は、朝より夕方、夕方より明日のお勤めのクオリティーを上げ、情熱を忘れることなく自分のなすべきことを淡々となしていく。二つ目は、自分の身の回りを整えることができないと、自分の人生をちゃんと整えることが出来ない。三つ目は、人が喜ぶことを言い、人が喜ぶことをしなさい。人間は誰でも、自分自身が一番大切。だけれども、まず相手を大切にすることで、自分が相手から大切にされる。最後に、ありとあらゆる捕われを捨て切りなさい。世の中で生きていれば、色々な良いこと悪いことがある。良いこともずっと続かないし、悪いこともずっと続くわけではない。だから、全てを捨てきって阿呆になりなさい。というルールに従って生活することで、人生がよりよくなる。

「私たちは、プラスとマイナスの狭間にいてこれをコントロールすることが人生の行です。まずは、自分の状態に気づき、これをいい方向に向けていくことが重要なのです。

身近なところに気づきがあり、自分を俯瞰して、色々なところから気づきを得て、自分をチューニングしていくことが大切だというのが、19歳のときから山を歩いて少しずつ分かってきたことです」と、塩沼大阿闍梨は締めくくられました。