10月21日(金)に第20回となる経営者朝会を開催させていただきました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてリニューアルしたグランドプリンスホテル新高輪には外国からのお客さんが大勢お泊りになっていて、観光立国としての日本の歩みの力強さを感じられます。そうした明るい雰囲気の中、今回も数多くの方にお越しくださり、おかげさまで今回も盛会のうちに終了いたしました。誠にありがとうございました。
10月21日第20回経営者朝会は、「教育」をテーマに開催させていただきました。OECD加盟国の中で立ち遅れている日本の教育界において、IT教育、そしてプロジェクト・ベースド・ラーニングの最前線で活動していらっしゃるお二方のリーダーのお話を伺い、次世代教育を考える良い契機となりました。
1982年、北海道生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒、同大学院修了。大学院在学中に、開成高等学校の物理非常勤講師を2年間務める。その後、株式会社ワイキューブを経て、2010年、 ライフイズテック株式会社を設立。
14年に、同社がコンピューターサイエンスやICT教育の普及に貢献している組織に与えられる “Google RISE Awards ” に東アジアで初の授賞となるなど世界的な注目を浴びている。「日本のIT界にイチロー並みの人材を送り出す!」を目標に世界を駆け回る日々を送っている。
https://life-is-tech.com
1988年慶應義塾大学卒業。三和銀行及び、三和総合研究所経営戦略部(マーケティング戦略構築、組織・人事戦略構築)を経て2000年博報堂入社。以来、運輸、自動車、金融、流通サービス、不動産、飲料、トイレタリーを中心とした企業のブランドコンサルティング業務に従事。 グループおよび企業の統合ブランド戦略立案、CI・VI開発、ブランド体系構築、統合情報コミュニケーション、インナーブランディング、組織変革等に主に携わる。
昨今は、社会への価値創出をマルチステークホルダーで取り組むソーシャルイノベーションプロジェクトを推進。2014年より、マルチステークホルダーで未来の社会・企業・教育のあり方を考える未来教育会議の実行委員会を立ち上げ、現在、小学校におけるモデル校プロジェクト、21世紀未来企業プロジェクト等、複数のブロジェクトを推進。
金沢工業大学客員教授、日本マーケティング協会 マーケティング・マイスターを務める。
http://miraikk.jp/
もともと物理教師をされていらした水野さんは中学生・高校生の教育に対して熱い思いを持っていらっしゃいます。ふとしたアドバイスで彼ら彼女らは自我を目覚めさせ自立しだす、だからこそ水野さんは「中高生が大好きだ」とおっしゃいます。
ライフイズテックは中学生・高校生に対してIT教育を行っている会社です。2011年に参加者3人スタッフ7人でスタートし、2016年現在では延べ2万人の子供たちが参加するまでに成長。これは世界でも第2位の規模に当たります。YouTubeを視聴しゲームもやっている、いわば消費者としての子供たちの、「生産者になりたい」という願いを叶えるために水野さんは会社を立ち上げたのだそうです。スタンフォード大学などで盛んに行われていた、大学でキャンプをやるという形でのIT教育をモチーフにスタートしました。
メインである夏の大学でのキャンプ活動にも2016年には延べ3500人の子供が参加しました。継続的に学びたいという子供たちに向けてスクールも開設し、現在では500人の子供たちがスクールに通っています。スクールでは、iPhone 向け・Android向けのアプリを作ったり、ポケモンGOにも使われているUnityでアプリを作ったり、プロジェクションマッピングを作ったり、デジタル音楽を作ったりとその活動は多岐に渡ります。そして、スクールに通う500人の内100人以上がアプリをリリースしており、総ダウンロード数は既に30万を超えているそうです。
水野さんは、プログラマーを育てたいのではなく「創造力」を育てたいという思いのもと会社を運営しています。「こうなったら社会が良くなる・誰かが幸せになる」というものを自分で考え・表現し、誰かからフィードバックを貰う。そしてそれを繰り返す。子供たちにはそのような体験をして貰いたいのだそうです。
教育を変えるためには、「入口」「中身」「出口」の3つをそれぞれ変えていく必要があると水野さんはおっしゃいます。まずは子供たちがITを好きになる「入口」としての場、そしてその子たちを伸ばす「中身」、更にはAO入試・起業と言った「出口」をそれぞれ設定してあげることが大事だそうです。
水野さんは、ライフイズテックの競合はディズニーランドだと考えているそうです。その根底には、ディズニーランドよりもエンターテインメントで楽しい場を作ろうという思いがあります。楽しいから通っていたら勝手に学べてしまった、というのが理想だと水野さんはおっしゃいます。地域格差・経済格差を解消するためにマザーというシステムも開発しました。このマザーでは「楽しく学べる」ということを実現しています。
水野さん個人としての目標は、「21世紀の福沢諭吉」になることだそうです。そして、「IT教育による創造力の育成・アントレプレナーシップ教育による実行力の育成・オンライン教育による知のオープン化・先生の力を最大限化するプラットフォーム・21世紀の学校・グローバルに学び合う土壌」という自らが設定する教育変革6箇条の実現に向けて日々邁進しています。
また、第2創業期を迎えるライフイズテックの、今後10年間のコンセプトは「世界のライフイズテック」だとおっしゃいます。ソニーも「世界のソニー」足り得たのは、まず自らが「世界のソニー」と名乗り出したが故だと言います。世界中の人々から、日本の会社と言えばトヨタ・ソニー、そしてライフイズテックと言って貰えるように、テクノロジーとエンターテインメントを活用して日本の教育を変えるという熱い思いを述べ、プレゼンテーションは締めくくられました。
博報堂は企業のブランドイメージを最大限にすることが仕事になります。その目標を達成するためには、企業のビジョンを共有することが出発点です。しかし、企業のビジョンをともに共有しても、2001年ごろから企業課題のみならず、社会課題が目立つようになりました。そこで、みんなで社会課題を解決しないといけないと、原さんはおっしゃいました。
企業の課題を解決するだけではなく、ソーシャルプロブレムを解決することはさらに複雑な方程式となります。それを解決するためにはやはり利害関係を超えワンセクターではなくマルチセクターのチームを作って、みんなで同じ目的に対して一緒に解決に向かっていく必要がある、と原さんは訴えます。
では、なぜ社会課題のうち教育を扱うことになったのかについて、原さんは説明を続けます。
それは、やはりすべては人づくりが起点となるからです。国づくりも企業づくりも人づくりから始まります。原さんは、そんな人づくりを通じてこれから未来のことについて考えていきたいと、おっしゃいました。
確かに日本の教育水準は高いということを、認めつつ、しかし、日本の教育は主体性や想像力、自己肯定感を高めることはできていません。と原さんは続けます。
では、どのように社会課題を解決していくのかというと、ワンセクターのみならずみんなのチーム、つまりマルチステークホルダーチームを作ります。そして、チームを作った後に
課題の本質がどこにあるのかシステム全体を見ていくスタディーツアーをします。そして、そのスタディーツアーから発見したことから新しいソリューションを生み出すのです。
では、未来教育会議は具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。
まずはマルチステークホルダーのチームでフィールドワークを行います。この際に未来教育会議が大切にしていることは、先入観なくゼロベースで体験することです。そこから見えてきたことを構造化します。
また、様々な国の名前が載ったグラフをスライドで示してくださいました。
このグラフは国別で、どの程度不確実性というものをポジティブに捉えられるか、ということがわかり、このグラフによると日本は不確実性というものをリスクだと捉える傾向にあるということでした。
さらに、スタディーツアーから見えてきた、教育について起きている問題をシステム構造化にしたものを示されて続けられます。衝撃的なことに教育の問題として言われていたことは、実は産業社会の企業の価値観が実は反映されているということです。
だから、教育自体の変革を進める、それだけではなく大人の社会が変わらないと、子供がギャップに苦しんでしまうと、原さんは主張します。
今までの教育というのは、主に経済成長を目的とした内容でしたが、これからは経済のみならず、社会や環境などすべての要素を見通していかないといけない。
では、未来教育会議が描く将来のシナリオというものはどのようなものか、それは①21世紀スキルを画一的に学ぶ学校②地域と繋がり学ぶ学校③社会と一緒に学ぶ学校です。
つまり、未来社会に生きるためのスキルとはどのようなものかを探索し、それを地域や社会で共有しようということです。
未来教育会議の将来について、幼児教育から生涯教育まで教育ラームにより担当者が変化している状況から、教育に関わる者すべてで未来を考える場を作ることをしたいと、締めくくられました。
質疑応答、および感想では、「選挙では票がないところには投資がない、よって教育には投資がないから民間でなんとかしないといけない」「教育対象の層も異なるため、ビジョンの共有は難しいと思うが、どうするのか」などといったものが挙げられました。