【開催報告】第19回SBP主催経営者朝会(2016/08/19)

8月19日(金)、第19回となる経営者朝会を開催させていただきました。体温に迫ろうかという気温が続いてましたが、それでもまだ涼しい早朝にたくさんの会員の方々にお集まりいただきました。皆様の向学心に心より感謝申し上げます。

今回の朝会は、これまで会員間での協働事例を発表していただきました。SBPはSocial Business Platformの略ですが、協働事例によってSBPは文字通り障害や偏見、貧困など社会的問題をビジネスを通して解決するプラットフォームになりつつあることが確認されました。

プレゼンター

1. 丸井グループ 代表取締役社長 青井 浩 様、同 CSR推進部長 戸井田 敦子 様

東京都出身。1983年慶應義塾大学卒業後、2年以上パリ、ニューヨークに留学。1986年丸井(現丸井グループ)入社。2005年から現職。「お客さまのお役に立つために進化し続ける」「人の成長=企業の成長」という企業理念に基づき、すべてのお客さまのためのお店づくりを通じて、お客さまの「しあわせ」を共に創る丸井グループの陣頭に立つ。

SBP理事。SBPネットワークでも社会課題に取り組む協働を進め、2016年5月に7万5千人数によるLGBTプライドパレードを渋谷丸井店舗のレインボーフラッグによりサポート、LGBTコミュニティーに熱い支持を受ける。

2. UBSグループ エグゼクティブ・ディレクター 堀 久美子 様

和歌山県出身。14歳で渡英し、英国国立レディング大学修士。2000年に帰国後、法務省所管の人権機関研究員、(株)損害保険ジャパンCSR・環境推進室を経て、現在グローバル金融機関UBSの日本と韓国オフィスのCSR・ダイバーシティを担当。社員による社会貢献を9年間で5%から65%へ向上。社員ボランティア活動は年間1万時間を越える。

また、LGBT社員ネットワーク、女性社員リーダーシップ向上、障害や手話セッション、親社員ネットワーク等、社員エンゲージメントと働き方変革・生産性向上ためのイニシアティブを牽引する。UBSグループ(UBS証券株式会社、UBS銀行東京支店、UBSアセット・マネジメント株式会社)は、長年の社会貢献活動の貢献により、2015年11月厚生労働大臣表彰を受賞。

内容

1. 丸井グループ 代表取締役社長 青井 浩 様、同 CSR推進部長 戸井田 敦子 様

丸井グループにおけるCSRの考え方として、本業と社会貢献を分けることなく一体化するのが理想であり、事業活動を通じてお客さまの「しあわせ」を共に創る(=共創経営)が会社のミッションでありCSRである、との説明からスピーチは始まりました。

ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス博士との会食がこれまでのCSR活動を見直すきっかけになったそうです。それまでは衣料品、シューズの下取りなどのリユース(再利用)やリデュース(ゴミの削減)、被災地支援などを行ってきましたが、もっと社会的インパクトある活動へのステップが必要だと青井さんは感じました。そこへ、本会会員で『バリアバリュー』の著者垣内俊哉さん(第17回朝会プレゼンター)との出会いが青井さんのCSRの取り組みのモチベーションに火をつけました。

丸井グループでは店舗勤務3000人中の99%がサービス介助士保持しており、障害者のお客様への対応は万全だと考えていました。しかしそれは「対応」であり、「どうぞお越しください」「ウェルカム」というメッセージになっていない。そこで垣内さんから、フラットな目線で普通の商売としてお声がけする ということがユニバーサルマナーだと気づかされました。

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またLGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Transgender)については、自らがトランスジェンダーであり『ダブル・ハピネス』の著者、杉山文野さん(第12回朝会プレゼンター)との交友により、性別は男女2通りではなく、心や身体の性別を組み合わせることで27通りにもなることを教わります。

青井さんは杉山さんに「LGBTの人はどんなニーズがありますか」と伺った際のエピソードをお話になりました。杉山氏は、「胸を小さく見せるブラなんていいですね。別に、LGBT向けの商品が欲しいわけじゃないんです。ただサイズがあれば買えるんです」と。トランスジェンダーの方々には切実な想いやニーズがあることを知らなかった、ということが非常にショックだったと青井さんは打ち明けられました。

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以上を踏まえ、CSR推進部長の戸井田敦子さんより具体的な社内でのさまざまな取り組みをご紹介いただきました。戸井田さんは、「丸井グループは年代・性別・障害のような壁を乗り越えて、すべての人に楽しんでもらえる商業施設を目指しております」とハートフルな言葉でプレゼンを締めくくりました。

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2. UBSグループ エグゼクティブ・ディレクター 堀 久美子 様

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2人目のプレゼンターはUBSグループの堀久美子さん。堀さんは「ダイバーシティ(多様性)」をテーマに、ワークショップ形式でお話をしてくださいました。

「ダイバーシティに取り組むことが事業価値、若しくは社会的な価値を多く生み出すことに繋がる」と堀さんは仰います。しかし、そこで問題になるのは、人間は誰しもが“無意識の偏見”を持っているということです。どんなに優秀な人でも、過去の経験などに影響を受け、時に偏った判断をしてしまい、それが間違った決定に繋がります。彼女は、いかに私たち人間が“無意識の偏見”を持っているのかということを、日本が中央に位置された世界地図など様々な例を列挙しながら紹介してくださいました。会場の参加者もそれらのトピックを参照し、時には驚きの表情を浮かべ、「なるほど」と納得している様子でした。

人間が潜在的に持つ“無意識の偏見”を意識化することは難しいけれど、それは最適な決定を阻んでしまうことがあります。そのようなマイナスの影響を出来るだけ自分で直すことが必要なのです。以下がこのような“無意識の偏見”を減らす5つのステップです。

①偏見があることを受け止める②正しい条件を付ける③公平なゴールを定める④決定過程において十分配慮する⑤インクルーシブな環境を作る。

また、前述したようにダイバーシティに取り組むことは様々な社会的価値や、新しい価値を生み出すことに繋がりますが、特に“チームの強さ”に繋がることがわかっています。同じような人がいるチームと、多様な人が活躍できるチームのパフォーマンスを比較してみると、最終的により良いパフォーマンスを発揮するのは多様な人のいるチームなのです。

私たちが社会で取り組まなければならない多様性は、“gender diversity”や“cultural diversity”、“generation diversity”など数多くあります。例えば、“gender diversity”に関して、各国を比較した国別役員割合によれば、日本における女性の役員の割合は他国よりもまだまだ低い水準にあります。さらに“gender diversity”の改善で、世界のGDPが34%上がるのではないか、ということも言われており、今後日本はもっと積極的に取り組んでいかなければなりません。また、堀さん自身も改善が難しいと感じつつ、現在会社で取り組んでいるのは“generation diversity”。現代のような、世代によって非常に特色のある人たちが同じ組織の中、あるいは同じチームの中で働いているということは世界の労働市場初であるそうです。

プレゼンの最後にはUBSグループが最近、障害児福祉施設「金町学園」と取り組んでいる社会貢献プロジェクトを紹介してくださいました。先日開催されたイベントでは、社員と聴覚障害者がチームを組み制限時間内に謎を解くという内容のゲームを行ったそうです。参加した社員からは、「仮にコミュニケーションに難があったとしても、それぞれの強みがパフォーマンスの向上に繋がることを実感できた」というコメントがありました。

「いつもとは違うところに一歩足を踏み出すと、新しいマジックが起こる場所がある」という言葉でプレゼンを締めくくった堀さん。このプレゼンを通して、様々な気づきを得ることが出来ました。