【開催報告】映画「Two Tales of Whales(ふたつのクジラの物語:邦題・仮)」作成を応援する朝食会 (2016/07/08)

7月8日(金)に臨時企画として、映画「Two Tales of Whales(ふたつのクジラの物語:邦題・仮)」作成を応援する朝食会を開催させて頂きました。
急な開催にもかかわらず30名強のご出席を賜り、誠にありがとうございました。

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人口3千人あまりの和歌山県太地町を舞台として撮影されたアカデミー賞受賞作、「ザ・コーヴ」で取り上げられて久しいですが、クジラとイルカを巡る国際紛争は未だ収集の目途が立っておりません。今回、敢えてその難しい問題にチャレンジされている佐々木芽生監督をお招きし、作成されている映画「Two Tales of Whales(ふたつのクジラの物語:邦題・仮)」のご紹介と作品にかける想いをお話し頂きました。

プレゼンター

監督・プロデューサー 佐々木 芽生 (ささき めぐみ)
ドキュメンタリー映画監督・プロデューサー。1987年以降、ニューヨーク在住。
1992年4月からNHK『おはよう日本』でニューヨークの経済情報を伝えるキャスター。1994~1996年、世界各国から身近な話題を伝える『おはよう日本』のコーナー『ワールド・ナウ』NY担当レポーター。

2008年、つつましい収入から世界屈指のアートコレクションを築いたNYの公務員夫妻を描いた『ハーブ & ドロシー 』で監督デビュー。同作は、世界30を越える映画祭に正式招待され、米シルバードックス、ハンプトンズ国際映画祭などで、最優秀ドキュメンタリー賞、観客賞など多数受賞。NYでの封切り後、ドキュメンタリー映画としては異例の17週を越えるロング・ランを記録した他、全米60都市、100を越える劇場、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで劇場公開された。日本でも2010年11月 、渋谷のシアター・イメージフォーラム にて公開週末に動員記録を更新、同劇場の歴代2位の興行成績を収めた。

2013年、続編にあたる『ハーブ & ドロシー2~ふたりからの贈りもの』の制作費一部と日本での宣伝配給費をクラウドファンディングによって1,463万円集め、当時の日本最高記録を更新する。同作は、世界に先駆けて日本全国の劇場で公開され、現在も全米の劇場や美術館、世界各国のアートフェアなどで上映が続いている。

2014年3月からNHK WORLD にて、日本の美術を紹介する英語番組 ART TIME-TRAVELERリポーター。現在、クジラとイルカ問題をテーマとした長編ドキュメンタリー映画の製作進行中。

内容

アカデミー賞受賞作品の「ザ・コーヴ」がきっかけとなり、紀伊半島南端に位置する和歌山県太地町にはクジラ・イルカ保護を掲げる活動家などが多く訪れ、批判の格好の標的となってしまっていました。

中でも環境保護NGOの著名団体であるシー・シェパードも太地町に乗り込んでは現地の漁師を相手に脅しとも捉えられる非難活動を続けていて、歴史的のある古式捕鯨文化を未だに維持しクジラと共存してきた太地町の住民との理解のズレの溝は深まる一方でした。

佐々木監督はこの両者の文化的背景、「伝統」に対する考え方、クジラ・イルカという動物に対する見方、における違いをそれぞれの立場からの声を直接集めることで各プレーヤーの考え方をフェアに紹介し、この問題に対する誤解の縺れを解きつつ、かつ、映画の視聴者に中立的に問いかけるものを目指して作成に臨まれたといいます。

佐々木監督ご自身が「ザ・コーヴ」を観られた際には、感動し非常に良くできた映画だと感じたが、一方でクジラ保護側に偏ったバイアスが強い作品であるという問題意識を抱かれたとのことです。そこから本作品へのチャレンジを決意し、これまでにクラウドファンディングなどを通じて得られたファンドを基に制作活動を進めてこられましたが、まだ現在も今秋をターゲットとしている上映に向けてファンドレイズを募っている状況です。ファンドレイズにご協力頂ける場合はSBP事務局までお問い合わせください。

映画紹介の冒頭では、「ザ・コーヴ」で放映された残虐に脚色されたイルカの追い込み漁シーンや太地町の住民を避難するシー・シェパードの映像などが紹介され、地元の人たちに一定の理解のある日本人の自分ですら追い込み漁に対する恐ろしさを覚える場面もありました。

しかし、その後のシーンで佐々木監督自身が太地町の住民やシー・シェパードにインタビューを進めていく中で双方の立場の話を伺うと、どうもクジラ・イルカを殺す・殺さないという議論だけではなく、様々な目的関数を持ったプレーヤーが絡んでいるような絵姿にも見えてきました。

太地町の住民はイルカ漁が主要産業であることは大前提ではあるものの、それに加えて「伝統」や「文化」、生き物への感謝という考えを持たれている一方で、「今後捕まえる分はともかく、今捕まえているイルカを開放する為にいくら払えばよい?」と投げかけて、それに応じた際には『所詮、太地町民にとっても金儲けの道具としてクジラなんだ』というレッテルを世界に発信したいが為のシー・シェパードからの駆け引きの場面もありました。また、もともとクジラはタンパク源に乏しい日本という島国において貴重な栄養源や資源であった一方で、クジラ・イルカは知能があり人間に近い生き物なので殺してはいけないという意見があったりと、お互いの文化背景の理解がなされないままでは永久に折り合いがつかない問題であると感じました。いえ、仮に文化背景の理解がなされたとしても折衷案を見つけるのは非常に困難であるかもしれません。

この問題に関与する人それぞれで考え方のベースは異なりますし、中立的な立ち位置というのもそれを定める人によって少しずつ異なってきますし、そもそも中立というのが誰と誰と誰にとって中立なのか?ということは誰にも決められないかもしれません。

それでも、この問題について前に進んでいくためには各プレーヤーの考えや背景を理解しないことには始まらないですし、その時にバイアスをできる限り排除した情報を取り入れるという観点では、佐々木監督の活動は大変意義深いものと察します。

朝会用短編ムービーの最後の方では外国人ながら現地の生活を理解する為に会社も辞めて太地町に住み込むことを決めたジャーナリストが紹介されていました。その心意気に感心を覚えるとともに、外国人アレルギーが蔓延ってしまった太地町でその外国人ジャーナリストがどのようにして溶け込んでいくのか、そして考え方がどの様に変わっていくのか、もしくは変わらないのかが非常に気になったところで映画のご紹介は終わりました。是非完成作品上映されたら観に行きたいと思います。

最後に佐々木監督からのメッセージを引用させて頂きます。

「ふたつのクジラの物語」は、捕鯨問題における全く新しい視点を、世界に向けて提示するドキュメンタリー映画です。感情や政治をベースに語られがちなクジラとイルカ問題に一石を投じ、人と生き物との共存、異文化への理解についての健全な議論のきっかけとなることを願っています。

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