【開催報告】第12回 SBP主催 経営者朝会(2015/02/13)

京都大学大学院工学研究科修士1年の里内俊介と申します。本朝会からSBP事務局のお手伝いをさせて頂きます。よろしくお願いいたします。

2月13日(金)に第12回目となる経営者朝会を開催させて頂きました。おかげさまで満員のご参加を頂き、盛況のうちに終了しました。誠にありがとうございました。

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今年初となる経営者朝会は、「LGBTs(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)」をテーマに、社会的意義がきわめて高い事業を展開されている2名のプレゼンターをお招きしました。

日本のセクシュアル・マイノリティ市場は5.8兆円ともいわれますが、その潜在的可能性をビジネス機会へ繋げ、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指す事業はまだ多くはありません。

【プレゼンター】

1) NPO法人ハートをつなごう学校 代表 / トランスジェンダー 杉山 文野 様

1981年東京都新宿区生まれ。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院にてセクシュアリティを中心に研究した後、その研究内容と性同一性障がいである自身の体験を織り交ぜた『ダブルハッピネス』を講談社より出版。韓国語翻訳やコミック化されるなど話題を呼んだ。卒業後、2年間のバックパッカー生活で世界約50カ国+南極を巡り、現地で様々な社会問題と向き合う。

帰国後、一般企業に3年ほど勤め、現在は自ら飲食店を経営するかたわら、セクシュアル・マイノリティの子どもたちを応援する「NPO法人ハートをつなごう学校」や「東京レインボーウィーク」の代表、各地での講演会やNHKの番組でMCなども勤める。
http://heartschool.jp
http://fuminos.com

2) 株式会社Letibee 代表取締役 外山 雄太 様

2010年に北海道から上京し、慶應義塾大学環境情報学部に入学。入学後、デザイナー、イラストレーター活動をtom名義で始める。自身が高校時代の失恋時、毎日泣いてしまう生活を 3ヶ月続け、友人へのカミングアウトを決意した、という原体験から Letibeeを2013年にスタート。

「好きな人に当たり前に大切にできる」社会の実現を目指し日々活動している。2014年大学を卒業しLetibeeを法人化。共同代表取締役に就任。ブランディングやLGBTウェディング統括等を担当。
http://letibee.com

【内容】

1) NPO法人ハートをつなごう学校 代表 / トランスジェンダー 杉山 文野 様

まず杉山さんから、LGBTsと日本の現状についてのご講演。

人の性は、「男性」か「女性」かの2通りのみで語られることが多いです。

しかし、人の性は、①身体の性別②心の性別③恋愛対象になる相手の性別で3つの要素に分けて考えた時に、それぞれの性に、「男」、「女」、そして「男」「女」どちらにも当てはまらない「第三の性」が存在するならば、全部で3×3×3、つまり27通りの性があると言えるのです。(表1)

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人の見た目だけでは27通りのうち、どれに当てはまるかは分かりません。
(この後、写真を見て、写っている人が1~27番のどの性かを当てるクイズが何問か出題されましたが、私はほとんど分かりませんでした。)

セクシュアリティは「目に見えない」もの。多くの人がカミングアウトできずに困っています。

電通ダイバーシティ・ラボの調査(2012年)によると、日本の人口の5.2%がLGBTsであるという結果がでています。自覚していない潜在的なLGBTsの数を含めるとさらに大きくなる可能性があります。この5.2%という数字は、日本人の姓、佐藤・鈴木・高橋・田中の割合よりも多いそうで、それが事実ならば、私達の身近な所にLGBTs当事者の方が存在しても不思議ではありません。

企業活動の目線では、先述した通り市場/クライアントとしてのLGBTs と、当事者である従業員への理解やその方達の労働環境の整備という2 つの観点でこの課題と向き合うインセンティブがあると考えられます。

一方で、こうしたLGBTs支援のために、数としては少ないですが、企業や自治体が動き始めています。渋谷区は日本で初めて同性婚を認める条例案をこの3月に議会へ提出します。

教育現場では、性同一性障害によって、心と体の不一致を自覚し始める中・高校生の自殺や不登校の割合が高くなっています。

自分の悩みを一人で抱え込むことが多いLGBTs若年層の支援を目的としたNPO法人「ハートをつなごう学校」の代表を務める杉山さんは、こうした子供たちに各方面で活躍するLGBTsの大人たちを紹介する活動などを通して、若いLGBTsの心を勇気づけています。

2) 株式会社Letibee 代表取締役 外山 雄太 様

次に外山さんから、LGBTsをどうやってビジネスに結び付けていくのかというご講演。

外山さんは、株式会社Letibee(レティビー)で「すべての人が、セクシュアリティに関わらず自分の幸せを自由に追求できる社会」の実現に向けて、LGBTsを支援する業務を行っています。

例えば結婚式。
同性カップルが挙式する際、様々な問題や不安がカップルに生じます。当たり前に好きな人と一緒にいられるように、当事者たちが安心して挙式できるよう支援をされています。

挙式以外にも、相続問題、保険など法的困難から当事者を救うべく情報を提供されています。

さらに、Letibeeは企業向けの研修を行っており、この研修を受けた企業は「LGBTsダイバーシティマーク」を付与され、当事者が安心して企業に連絡をできる工夫をされています。

Letibeeは”Let it be”が語源。 1人1人が自分らしく生きていける社会の実現に向けて、活動されています。

日本のセクシュアル・マイノリティ市場は5.8兆円ともいわれていますが、実は、LetibeeのようなLGBTsを対象とした会社は日本には少ないのが現状です。しかし、同性婚でも住所が同じであれば、家族割を認める携帯会社など、日本の企業も少しずつ動き始めています。

日本の企業と海外市場において意識のギャップが生じる例があります。

あるゲーム会社は、人間型キャラクターが架空の生活を楽しむゲームを発売しました。ゲーム内で恋愛関係も楽しむことができるのですが、その相手は異性のみ。海外で、セクシュアル・マイノリティを排除していると激しく批判されました。

海外でのLGBTsを取り巻く環境はどうなっているのか。例えば、ニューヨークでは、1年間で8,000組以上のカップルが結婚し、200億円以上の大きな経済効果を生んでいます。

日本は世界的にみてLGBTsへの関心は低いといえます。
2020年、東京オリンピックで再び世界から脚光を浴びることとなる日本。1人1人が自分らしく生きる時代の実現に向けて、課題は多いようです。

お二人のご講演の後、各界の方から質問が多くありました。

  • 同性婚の増加によって少子化に拍車がかかるのでは
  • 日本の教育現場の現状、企業として何か関われることはないか、世界にはどんな事例があるか
  • 当事者の方を無意識のうちに傷つけている表現はあるか
  • LGBTs問題を商品開発にどう生かせるか
  • 企業の抵抗感についてどう克服するか
  • “Black is beautiful”のようなLGBTsのためのスローガンは何かないか 等々

時間が過ぎても、質疑応答は途切れず、参加者の皆さまのLGBTsへの興味や関心の高さが窺えました。

「彼氏はいるの?」「彼女はいるの?」ではなく「パートナーはいるの?」
ちょっとした意識の変化がLGBTs当事者の方の心を和らげます。

当事者ではない人たちがよく使う“ふつうの人”という言葉も当事者たちを傷つけます。

私は、今回の朝会に参加することで、多くの発見があり大変勉強になりました。当事者の方たちを救うには、LGBTs問題に関心をもつこと、そのきっかけとして教育の充実が重要であると強く感じました。

また、学校教育などの場面においては、LGBTs は「性の問題ではなくアイデンティティの問題」であることから導入すべきだという意見もあり、強く共感を覚えました。

質疑応答の後も、活発に意見交換がなされ、朝会は盛況のうちに終了しました。皆さま、有難うございました。

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▲プレゼンターの皆様:
NPO法人ハートをつなごう学校 代表 杉山文野 様(右)
株式会社Letibee 共同代表取締役 外山雄太 様(中)
株式会社Letibee 共同代表取締役 林康紀 様(左)

次回の経営者朝会は4月17日(金)に開催予定です。テーマは「農林業」。別途詳細のご案内させて頂きますので、どうぞご参加ください。