【開催報告】第43回SBP経営者朝会(2024/6/21)

第43回目となるSBP経営者朝会はリアルとオンラインのハイブリッド形式での開催となりました。今回は「サイエンスの社会実装 女性の健康」をテーマに2名の起業家の方にご登壇いただきました。

Dr. Eliseva Olga (オリガ・エリセーバ)医学博士 
Her Life Lab 創業者 代表取締役CEO
沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員

Her Life Labの取り組み

Her Life Labはオリガさんの「更年期を迎える女性を助けたい」という思いから、健康と長寿の島で知られる沖縄の地に設立されました。女性の健康に関するデータを収集し、テクノロジーを活用した新たな医療サービスの開発に取り組まれています。日本では、更年期症状を感じる女性600万人のうち4%の女性しか適切な医療を受けていません。女性がホルモンの変動に左右されることなくいつも活力に満ちた生活ができる姿を目指し、納得する治療を追求できるオンライン診療「Vivalle」を提供し気軽に相談することを可能にしています。

女性医療への支援不足

オリガさんは日本の更年期女性支援不足について、女性医療の研究不足や文化的な我慢強さ、教育不足からくる社会的圧力が関係していると考えています。古代ギリシャの医師ヒポクラテスが「女性は男性の不完全な存在」と唱えてから約2400年、女性は医学研究の対象から除外される傾向が続いてきました。その結果、女性の生物学的知識は男性に比べて乏しく、女性特有の健康問題への関心も低迷しています。またアジアでは我慢の文化が根付いており、更年期を認めたくない女性の心理状況が社会の理解不足に繋がっていると考えられています。

更年期の理解と今後の課題

オリガさんは、更年期に対する正しい理解を男女問わず全ての方に広めたいと考えています。更年期障害は、女性ホルモンの急減に加え、個々の心理的要因、家庭や職場などの環境による社会的要因が複雑に絡み合って起こります。多くの女性にとって寂しく困難な時期であり、自信喪失や鬱、パートナーとの関係悪化を防ぐためにも適切なケアが必要です。

今後、医療従事者を含めた男女全ての人に更年期の教育・意識改革を行い、A Iを利用した女性医療のデータ研究を進めることが重要となります。現状では、婦人科を受診しても十分な解決策が得られないことがあり、また女性向け施設も、主に妊娠・出産に関連するサービスに偏重している傾向があります。悩みを1人で抱え込まず共有できる環境作りにも取り組み、心に寄り添いながら身体を科学的に理解し、更年期の女性をサポートすることが求められています。

田上 佑輔(たのうえ ゆうすけ)様
やまと地域医療グループ代表 医師

地域医療事業に至った経緯

田上さんは10年程前、東大病院に勤めていた際、本当に自分がやりたいことは何か、社会貢献について考えるようになりました。東日本大震災をきっかけに東大を飛び出し、医者が不足している地域で診療所を開設した時、初めて自分のリーダーシップを感じることができました。加えてこの原体験から、医学部内で行動力があり新しいものとの親和性が高い人に着目し、彼らの背中を押すことの重要性を認識しました。

地域医療への取り組み

現在、「若手医師のキャリア・これから」を開拓するメンタリングプログラムで、全国13地域で病院や診療所の運営を行い医療人材循環モデルの構築に取り組んでいます。若手医師に各拠点を巡回してもらい、地域住民との直接的な交流を通じて医師としての人間性とリーダーシップスキルを育成しています。また、一箇所にドクターを留めず、都道府県レベルで地方に循環させることで、医者不足の地域にも医療を提供できるモデルを維持しています。この過程で、かかりつけ医による定期検診が日々のパフォーマンス向上に寄与するにも関わらず、45歳以下でかかりつけ医を持つ人が少ないという課題も明らかになりました。

女性医療の「見える化」

女性は思春期や成熟期はもちろん、常にホルモンの影響を大きく受けています。しかし、かかりつけ医を持つ女性は少なく、何かあれば相談できる場所が必要だと考え「moneレディースクリニック江戸川」の立ち上げに協力しました。

現在、女性ホルモン値の「見える化」に着目しています。見える化の例として、アップルウォッチを用いてセロトニンとコルチゾールで構成されているストレスを心拍反動によって可視化することがあります。女性の身体はエストロゲン、プロゲステロンを含む7つのホルモンに影響されており、それらを見える化する取り組みが進んでいます。当初、ホルモン値の測定は病院での血液検査が必要でしたが、現在は脳波測定によっても数値を把握できるようになりました。女性は、パフォーマンスが低い時、調子が悪い時に自分のせいにしがちですが、ホルモン値などの見える化が進むことで、自己肯定感が増し、さらに新しい予防策や対応策が見えてくるのではないでしょうか。