【開催報告】第34回SBP主催経営者朝会(2020/6/19)   

6月19日(金)、第34回となる経営者朝会を開催させていただきました。

今回は「共感資本主義」と「社会的インパクト投資」をテーマに、金融業界で先陣を切り、新しいお金のあり方を作っているお二人にご登壇いただきました。

COVID-19の影響で、朝会史上初のオンライン開催でしたが、変わらずたくさんの方々に集まっていただき、今回も盛会のうちに終了いたしました。誠にありがとうございました。

プレゼンター

鵜尾 雅隆(うお まさたか) 様 
認定NPO法人日本ファンドレイジング協会 代表理事
Global Steering Group for Impact Investment 日本諮問副委員長(旧G8社会インパクト投資タスクフォース)

2004年、米国ケース大学で非営利組織管理修士取得。同年、インディアナ大学The Fundraising School修了。JICA、外務省、米国NPOなどを経て2008年、NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業。2009年、寄付10兆円時代の実現をめざし、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。認定ファンドレイザー資格の創設、「ファンドレイジング日本」開催、『寄付白書』発行、子どもの寄付教育等、寄付・社会的投資促進への取り組みなどを進める。著書に『ファンドレイジングは社会を変える』(三一書房)、『寄付してみよう、と思ったら読む本』(共著、日経新聞社)など。

https://jfra.jp

新井 和宏(あらい かずひろ) 様  株式会社eumo 代表取締役

1968年生まれ。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。2007~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つ。2008年11月、鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍(個人投資家約1万9千人、純資産総額約360億円(2018年5月時点))。2018年9月株式会社eumoを設立。

https://eumo.co.jp

内容

鵜尾 雅隆(うお まさたか) 様
認定NPO法人日本ファンドレイジング協会 代表理事
Global Steering Group for Impact Investment 日本諮問副委員長(旧G8社会インパクト投資タスクフォース)

最初のプレゼンターは、認定NPO法人ファンドレイジング協会の代表理事を11年間務めている鵜尾雅隆さんでした。鵜尾さんは税金だけに頼らずに社会変革したい、また誰かがお金のテーマに真正面から向き合うべきだと思った経験からファンドレイジングの育成を行っていらっしゃいます。

社会的インパクト投資への流れ

リーマンショックを経て、行き過ぎた資本主義への反動の中から富裕層の社会貢献が拡大し、社会にイノベーションを起こしたい人が増えたと鵜尾さんは仰いました。それにより、社会的インパクト投資への流れを生んだそうです。

その流れが主流になるような出来事が、リーマンショックの数年後に起きた東日本大震災だったと鵜尾さんは仰います。

クレジットカードでの寄付が当たり前になり、クラウドファンディングが広まるなど、様々なタイプの寄付が生まれ、普及しました。また、これを機に社会貢献活動について考える人が増えたとも仰いました。行政だけでは支援しきれないということを多くの人が認知し、NPOの社会的位置づけが政策的に変化したと説明してくださいました。

社会的インパクト投資とは

先に述べた東日本大震災をきっかけに、社会的インパクト投資の考えが普及をしたそうです。社会的インパクト投資とは、社会的課題の解決に取り組む企業NPOなどを含む民間の団体に対し、経済的リターンと社会的リターンの両方を実現する投資手法のことです。特に人生の集大成への社会貢献を目的に、遺贈寄付が現在非常に増えているそうで、これから年金資金でもインパクト投資広げようという動きがあると鵜尾さんは仰いました。

社会的インパクト投資の例として、ソーシャルインパクトボンドがあるそうです。これは行政サービスを民間の団体に委託し、民間の出資者から調達した資金を基に事業を行い、行政支出が削減できた場合に投資家に払い戻す仕組みのことです。このように近年では行政との連携をとりながら、社会的インパクト投資を広めようという動きがあります。

社会的インパクト投資がつくるこれからの社会

社会的インパクト投資が目指すもの、それは市場原理に基づく行動、税収による政府の課題解決など、社会に対してポジティブな「インパクト」を与えられるという情報開示だと鵜尾さんは述べられました。子供たちが社会現象を変えられると思っていないのが日本の課題である今、自分たちが何かを変えられるという意識を持つようになるためにも、上場企業が社会にポジティブな影響を与えているという情報開示が求められると主張されました。

最後に日本人が幸せになるための幸福の四要素「ありのままでいいと思える」「何とかなると思える」「誰かに感謝される」「やりたいことがある」を引用し、腑に落ちればお金の流れは変わると強い言葉でプレゼンテーションを締め括られました。

新井 和宏(あらい かずひろ) 様  株式会社eumo 代表取締役

第二部のプレゼンターは株式会社eumoの代表取締役を務める新井和宏さんです。人々のやりがい、幸福を追求しようという想いから、2018年に会社を立ち上げられました。

新井さんの人生の問い

 新井さんは「お金とは何か?」ということを人生のテーマとして掲げてきたと最初にお話ししてくださいました。

会計とは数字だと思っていた学生時代の新井さんにとって、会計とは経営そのものを表現する手段であると教えられ、それに深く衝撃を受けたのが最初にお金に興味を持ったきっかけだそうです。そして就職した会社で上司に「お金とは何か?」と問われた経験から、これについて深く考えるようになったとお話ししてくださいました。

そこで働いている間にストレス性の難病に2007年の夏に患ったことで、退職し、鎌倉投信を始める決意をしたそうです。この会社を立ち上げるときに意識したことは、まさに新井さんの人生の問いである「お金とは何か」ということだったそうです。リーマンショックの後に立ち上げたこともあり、世の中がお金に特に過敏になっている時期だからこそ、資産の形成だけでなく、そこに心の形成と社会の形成を掛け合わせたビジネスを始めたと経緯を説明してくださいました。

業界の非常識を使ったビジネスモデル

 従来の金融機関の仕事である資産形成に加え、心の形成と社会の形成を掛け合わせたビジネスをするうえで、金融業界が今まで避けてきたことをあえて行ったそうです。その際意識したことはこの4つだったと説明してくださいました。

  1. ミドルリスクの商品を出す(=ライバルがいないからその市場を独占できる)
  2. 小型株でローリターン(=業界ではハイリターンが当たり前だがあえて短期的にはそんなに儲からないものを使う)
  3. 流動性リスクをあえてとる(=他の人が取りたくても取れない投資先を用意し、積み立てをしたいお客様に特化)
  4. 現金をわざと持つ

これらの方針を通し、パフォーマンス1位を保持し続けることができたと新井さんは仰いました。

eumoが目指す社会

しかしこれらの取り組みを通じて、金融は格差を埋めることができたとしても、プラスは生み出せないということに気づいたそうです。現代ではクラウドファンディングなど共感でお金の流れを産むのが主流ですが、共感疲れが出てきて今後その限界を迎えると新井さんは予測をしていらっしゃいます。そこで共感の循環を作り出す株式会社eumoを立ち上げられました。

現在eumoでは、共感コミュニティ通貨を使って、誰もがお金を定義できるプラットフォームづくりを行っています。6月にはeumoコインをフェアトレードコイン、Uedaコインに変換できるサービスをリリースし、お金の流れを作る仕組みを展開しています。

最後に、新井さんは正直者が馬鹿を見ない社会づくりに貢献したいという力強い思いを語ってくださいました。

本年度初の開催であった今回の経営者朝会では、世界を先駆し新しいお金の仕組みをつくっているお二人のお話を伺い、これからのお金のあり方について学ぶことができました。