【開催報告】第14回 SBP主催 経営者朝会(2015/06/19)

SBP事務局の里内です。

6月19日(金)に第14回目となる経営者朝会を開催させて頂きました。おかげさまで満員のご参加を頂き、盛況のうちに終了しました。誠にありがとうございました。

第14回経営者朝会は、「ソーシャルx IT」をテーマに、社会的意義がきわめて高い取り組みを展開されている2名のプレゼンターをお招きしました。

ハッカソン/アイデアソンに代表される多様な共創協働型イニシアティブ、衛星リモートセンシングを使った被災地域地図作成。テクノロジーを活用した市民の手による地域課題の解決、行政・政治・市民参画などをあらわすキーワードとしての「シビックテック」など。これまでのソーシャルビジネスの有り方を根本的に変革させるような試みがITを中心に拡がりつつあります。今回はこうした領域の第一線で活躍するアントレプレナーからプレゼンテーションいただきました。

【プレゼンター】

1. 防災減災ハックフェス Race for Resilience 代表、青山学院大学 地球社会共生学部 教授、
マップコンシェルジュ株式会社 代表 古橋 大地 様

空間情報デザイン・衛星リモートセンシング。アマゾン熱帯雨林における違法伐採の取締りやハイチやネパールなどの現地政府が把握できない環境犯罪や自然災害の状況を地図に落とすマッピングのエキスパート。とくに世界のボランティアがインターネットを通じて協力し、宇宙インフラ、ドローン、パノラマ技術を用いた地理情報システムを使い詳細地図を数日間で作り上げる等、日本・世界のクライシスマッピングをリード。
http://crisismappers.jp/
http://raceforresilience.org/
http://gigapan.jp/

2. 株式会社ソーシャルカンパニー 代表取締役社長 市川 裕康 様

NGO、出版社、人材関連企業等を経て2010年3月に独立。社会イノベーション推進に必要な情報、海外のデジタルトレンドをいち早く調査・分析。企業・行政サービス・市民セクターなど幅広い分野のイノベーション支援・コンサルティングを実施。著書:『Social Good小事典』(講談社 2012年)。
www.socialcompany.org | Twitter @SocialCompany
関連記事:「シビックテックの未来| 現代ビジネス [講談社]
その他の現代ビジネスの連載記事:「デジタル・キュレーション

【内容】

1. マップコンシェルジュ株式会社 代表 古橋 大地 様

地図は我々の生活にとって欠かせないものですが、この地図を世界中の誰もが編集できる仕組みが整い始めています。

Wikipediaのように、白紙の地図上に誰でも編集できる地図、Open Street Map(OSM)という仕組みです。

地図を作る人、すなわちmapperの数は世界で200万人を超えますが、日本はトップ10に入るかどうかという微妙な位置。古橋さんは、学生への授業などを通して、mapperを増やす活動をされています。

このOSMの大きな特徴として、通常は使用に費用が発生するところ、フリーソースとして商用利用可能な点が挙げられます。誰でも自由に加工して使え、mapperの嗜好・アイデアが反映される自由度が高いことも魅力の一つです。

動物園の檻から、ディズニーランドの木の1本まで様々な情報を反映でき、見せ方も3Dにしたり、色をぬったりとmapperのセンスで好きにカスタマイズ可能です。

この地図作りの方法として、既存の地図情報を提供してもらう方法の他に、ボランティアで実際に現地を歩いて情報を入力する方法があります。日本各地でマッピングパーティというイベントが開催されており、参加者はその地域を散策する中で特産品や文化を楽しみながら、結果として地図が作成されることが狙いです。

OSMは、災害時に大きな効果を発揮します。災害時の情報は分散しやすく、情報を一元化できる仕組みが必要です。この地図は、どこで何が起きているのかを即座に把握可能にします。
2013年、伊豆大島での台風の際には、ニュース報道でも伝えられないローカルな情報を迅速に住民に伝えることができるなど、災害時にOSMが役立った事例がいくつもあります。

一方で課題もあり、多様性の反映です。OSMで活動する女性は非常に少ないという現状があります。

これは地図を作る上で、大きなバイアスがかかることを意味します。保育園や幼稚園の場所、小さな子供が入ることができるレストランなど、彼女らにとって必要な情報が必要とみなされない環境なのです。

車いすの方にとっては、エレベーターの場所や、車いすが入れる店か否かといった情報が必要となります。こういった情報を網羅したWheel map(ホイールマップ)といった取り組みもあります。

どうやってダイバーシティを高めるのか。大きな課題といえます。

OSMは誰でも参画が可能です。わずか8歳の子供でも災害時にOSMを使って地域に貢献できるのです。若い世代がこの課題を解決する一つのカギとなりそうです。

全日本人がmapperに。古橋さんは、“一億総伊能化”を目指します。

1

[質疑]

  • ランニングコスト・資金調達方法について、地図情報の検証について
  • どういった形で障がいをもつ人がOSMに参画できるか
  • 地図情報を規制する国について
  • JAXAの衛星画像利用について、アメリカとの比較

2. 株式会社ソーシャルカンパニー 代表取締役社長 市川 裕康 様

あらゆるテーマにおいて、海外にあり日本にない情報を伝える“キュレーション”活動をされています。情報洪水の中から必要な情報を吸収しやすい形にして、多くの人に伝えることでイノベーションを加速させることができます。

長時間の会議でも出てこないようなアイデアが、数十分、海外サイトを調べるだけで出てくることもあることから、こういったキュレーション活動は重要です。

“シビックテック”

この言葉は最近やっと日本でも知られ始めた言葉です。

地域課題の解決など、多くの人々の生活を改善するために使われるテクノロジーです。
たとえば、クライシス・テキスト・ラインというサービスがあります。若者が抱える鬱やいじめなどの相談をテキストで受け付け、カウンセラーが対応するサービスです。これらのテキストは、一日平均2万件届き、ビックデータとして自然言語処理によって分析され、傾向の把握、予測等に活用されています。

非営利団体のこの取り組みは、学校、企業、行政に利用されています。

“コミュニティマネージャー”

オフラインでの集まりの他に、オンライン上でも継続的に議論の場を設け維持することが必要になってきています。

FacebookやTwitterといったSNSが身近なものとなり、企業にとってもSNSの活用は当たり前のことになっています。

企業が、オンライン上で自社商品についてファンコミュニティをつくりたいと思ったとき、どうすればよいのか方向性を示し行動する専門家、それがコミュニティマネージャーです。企業と顧客、顧客と顧客のつながりを増やす仲介者としての役割があります。
こういった人材を企業の中でどう育成していくかが課題となっています。

“Meetup”

あらゆるトピックや地域に関して、オンライン上で集まりを呼び掛け、会って話をする。
共通のテーマがあることで、初対面同士でもすぐに打ち解けられ、思いがけない発見をすることができるものです。会うべき人が顔を合わせることができる仕組みです。

2

[質疑]

  • コミュニティマネージャーについて
  • 企業人として、明日から何を始めるべきか

各プレゼンテーションの後も活発に意見交換がなされ、数名の参加者の方とプレゼンターの間で協働に向けた議論も展開されておりました。

非常に先鋭的なテーマで多くの参加者の方から高い反響を頂き、朝会は盛況のうちに終了しました。皆さま、有難うございました。

3

次回の経営者朝会は8月21日(金)に開催予定です。テーマは「人材」を予定しております。
別途詳細のご案内させて頂きますので、どうぞご参加ください。