【開催報告】第13回 SBP主催 経営者朝会(2015/4/17)

4月17日(金)に第13回目となる経営者朝会を開催させて頂きました。多くの方のご参加を頂き、盛況のうちに終了しました。誠にありがとうございました。

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今回の経営者朝会は、「農林水産業の革新」をテーマに、自立経営・地方活性・環境保全などの観点で社会的意義が高い事業を展開されている2名のプレゼンターをお招きしました。

【プレゼンター紹介】

1) Y&Gディストリビューター株式会社 取締役社長 吉岡 洋介 様

昭和8年3月生まれの82歳の御年齢ながら、生まれ育った岡山県笠岡市にて、ファミリー農家経営をサスティナブルな自立した事業として成り立たせることを目指し、食物の安心・安全・安定供給が出来る植物工場の運営や岡山名産のマスカット生産に取り組んでいる。

吉岡氏は元来、全国的に有名な半導体企業の関連会社を創業し、次世代へ見事に事業継承を果たした敏腕経営者であるが、地域活性化や食料自給率の改善の一端を担うべく、5年前にライフワークとして農業に参入された。

今後は今春から入社してくる農家志望の若者へそのモデルを全て承継していく方針で、将来型ファミリー農家モデルの確立に真剣に取り組まれて実績を出しつつあるロールモデルである。

2)  NPO法人土佐の森・救援隊 理事長 中嶋 健造 様

1962年高知生まれ、環境コンサル等を経て、2003年土佐の森・救援隊、2014年自伐型林業推進協会設立。「林業は儲からない」、衰退した一次産業の象徴のように扱われる林業に今、一石を投じる自伐型林業。所有と施業が分離し生産集中・大規模化を図った結果、中山間地域の主産業だった林業は縮小してきた。これを見直し、バイオマス材を生産し、楽しく地域も元気にしながら行う副業的自伐林業。地域農家、会社員、定年退職者、都市部からの若者まで誰でも参加できる仕組みをつくり出すことで、荒れていた山が甦り、出荷した材と引き替えに発券される地域通貨が、地域経済を活気づける。初期投資を400万円程度に抑え、年200~1000万円稼ぐ兼業林業は、就労を増やし、放置林を減らし、持続可能な森林と地域づくりへとつながる新たな実践となる。

内容

1) Y&Gディストリビューター株式会社 取締役社長 吉岡 洋介 様

農作物の安心・安全・安定供給を実現し、継続可能なファミリー農家の経営モデルを確立すべく、植物工場での葉野菜生産と農園でのマスカット生産のノウハウを構築してきた。

植物工場で生産する野菜における、既存の土耕栽培製品との差別化要因としては、食の安心・安全(農薬散布が不要でクリーンルーム内で生産している為)、生産量・価格・品質の安定供給(凶作や自然災害の損失がゼロ、連作障害や土づくりの負担も無い)が筆頭に挙げられる。また、害虫による被害もなく、生産物の見栄えが大変きれいであり歩留りが良いことから、一般消費者向けの販売のみならず飲食店での使用にも非常に相性が良い様に見受けられた。

継続可能なファミリー農家モデルという点では収支計算が重要となるが、吉岡氏は“原価計算のできる農業”をテーマに掲げ、これまでの慣習となっていた買い手(小売り業等)が提示する価格で販売するのではなく、生産する為に必要な原価を積み上げて計算された価格での販売にこだわる。比較的利益率の高いマスカットも取り扱うことにより、売上全体としての利益率が改善されることは期待できるが、野菜・マスカットの両方に共通する課題は販売先の確保だ。

来期にはブレークイーブンとなる見込みだが、ファミリー農家の内部留保を蓄積していく為にはもう一段の利益確保を安定的に達成できる体制の確立が不可欠であり、まだ安定供給先となっていない野菜やマスカットの販売先開拓を目下の課題としている。その為には、上述した植物工場野菜の差別化要因に対して世間の認知度を高め、相乗効果が得られる事業パートナーに対してマーケティングを進めていくことが重要だと考える。

昨今の報道にもあった様に、食の安心・安全・安定供給は大きな社会的課題として認知されつつあり、特に食料自給率の低い日本にとっては喫緊の課題であることも事実である。食に関連する企業においてはこういったパートナーと協働することでライバルと差別化するアイデアが生まれることが期待できる。発表後も多くの参加者と吉岡社長の間で議論が弾んでおり、この経営者朝会が将来のグッドパートナーと繋がるきっかけとなれば幸いである。

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写真:Y&Gディストリビューターの吉岡社長

2)  NPO法人土佐の森・救援隊 理事長 中嶋 健造 様

自伐型林業の推進を最も効果的な消滅自治体対策と掲げ、その背景について解説された。

まず、衰退産業とレッテルを貼られている日本の林業(施業委託型林業)の現状について、山林所有者と施業主が分離されている為に施業者が生産性や大規模化を追求し山林環境の持続性が担保され難いことや、高性能林業機械の導入が求められコスト非効率な事業実態であることなどの問題点を指摘。また、大規模な施業となる場合には土砂災害や森林破壊の加速要因となるリスクが高いことも分かる。

一方、中嶋理事長が推進する自伐型林業は、一定の山林区画の中で択伐しながら林業を進めいくスタイルであり、施業規模やコスト管理なども自らの身の丈に合った規模で行える林業モデルと理解できる。事業主は限られた森林の持続的管理とその森林を離れず毎年収入を得ていく必要がある為、良好な森の維持が事業者のインセンティブとなり、非常に優れた環境保全型林業であると中嶋氏は考える。この点は、所有と施業が分離している旧来の林業では焼畑農業的に山を次々と変えていかなければならない大規模皆伐型の林業とは大きく異なる。

昭和30年代には45万人程度存在した林業従事者は5万人弱まで減少し、山林所有者と施業委託型の専従業者がその大部分を占める構成となった。これは、高性能林業機械を導入する為の初期投資やランニングコストが大規模であり、一定以上の事業規模でなければコスト非効率となり参入障壁が非常に高いという問題点に因る。一方、自伐型林業であれば1日当たり2~3㎥出荷できれば2万円前後の収入となりランニングコストや初期投資も大きな負担とはならない為、林業を専業にする方から副業やアルバイト程度に取り組む方まで林業従事者増大の為の裾野が広い。

林業で生計を立てられる見込みが立ち、その参入障壁が低ければ、潜在的なUターン・Iターン希望者やそもそも林業従事希望者が中山間地域に移住し、それが消滅自治体対策の一助となり得る。自伐型林業が林業政策のみならず地方創生の柱となることを期待したい。

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写真:NPO法人土佐の森・救援隊の中嶋理事長

各プレゼンターによる発表の後も、活発に意見交換がなされ、朝会は盛況のうちに終了しました。

プレゼンターのご両名ならびにご出席の皆さま、本当に有難うございました。

次回の経営者朝会は6月19日(金)に開催予定で、テーマは「IT&モビリティ」となります。別途詳細のご案内させて頂きますので、どうぞご参加ください。